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矯正治療: MIペーストの有効性について

カテゴリ:T.B.I.

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

MI Paste Plus to prevent demineralization in orthodontic patients: a prospective randomized controlled trial.

Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2011 Nov;140(5):660-8.
Robertson MA1, Kau CH, English JD, Lee RP, Powers J, Nguyen JT.

緒言

    エナメル質の脱灰や白斑は、滑沢なエナメル質にできる初期病変であり、特に歯冠の歯頚側1/3にできやすい。
そして、矯正治療を行った患者さんが少なくても1歯以上に白斑ができる割合(50%)は、矯正治療を行っていない患者さんのできる割合(24%)と比較して有意に高いことが知られている。
    矯正装置を撤去することで白斑の形成はなくなり、プラークコントロールを熱心に行うことでむし歯の初期病変を不活性化することができ、この白斑は時間とともに消失していく。
    高濃度のフッ化物を使用しても、歯の表層の再石灰化は促進されるものの、この効果が深層にまで達することはない。
    そして、過度な再石灰化は歯の表面の摩耗を引き起こし、変色の原因になり得るため、早期の高濃度フッ化物の応用はすすめられない。
    一方MI Paste Plus(MI: GC America)は脱灰を防ぐための新たな方法で、歯のミネラルを回復させ、唾液の分泌も刺激する役割がある。
    MIは牛乳由来のたんぱく質であるカゼイン アモルファスリン酸ペプチド カルシウム リン酸塩を含んでいる。
そして、カゼイン リン酸ペプチド水溶性カルシウムリン酸液の非結晶として安定しており、白斑に対してカルシウムとリン酸塩が高濃度に定着し、エナメル質の高度な再石灰化を起こす働きがある。
    そこで、本研究ではMIによる矯正治療中の患者さんの白斑に対する効果について検証する。

対象

50人の矯正治療を行っている患者さんで、ランダムに以下の2群に振り分けた。
・MIを使用する群(実験群: 26人)
・プラシーボ効果として、ただのペースト(Tom’s of Maine)を使用する群(実験群: 24人)

方法    

    ペーストの使用法は、1回/日、夜の歯磨き後にトレーにペーストを入れていただき3-5分そのトレーを装着してもらった。
    そして、4週間ごとの来院を3ヵ月間していただき、上顎第一小臼歯-第一小臼歯間の歯面における白斑の割合とむし歯による実質欠損の重症度について評価した。

結果

・エナメル質脱灰値において、実験群と対象群で、それぞれ評価開始時と評価終了時で271、135、126、258であった。
・実験群における脱灰値は53.5%減少していたのに対し、実験群では91.1%増加していた。
    この減少と増加は、観察を重ねるごとにその割合が高くなっていった。
・実験群では白斑の再石灰化が認められたが、実験群では脱灰を防ぐ効果は認められなかった。
・白斑の増減の割合は、前歯部でより有意に認められた。

まとめ

・実験群では、白斑の形成防止だけでなく、すでに認められる白斑の数が減少していた。
・実験群では、実験開始から終了において、歯の表面(歯頚側・歯冠側・近心側・遠心側)の脱灰指数が有意に減少していた。さらに、エナメル質脱灰指数が53.5%減少しており、44.8%むし歯が減少していた。
・対象群では、実験開始から終了において、エナメル質脱灰指数が91.1%増加しており、43.1%むし歯が増加していた。
・エナメル質脱灰指数とむし歯の数とに有意な相関関係が認められた。
・対象群において、矯正治療中は歯頚部に白斑が生じやすいが、実験群において歯頚部での白斑が減少していた。
・以上のことより、MI Paste Plusは、矯正治療中のプラークコントロールに対して有効である可能性が示唆された。

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