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矯正治療: 上顎歯列弓の外科的側方拡大について

カテゴリ:Surgery

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

Dental and skeletal effects of two-piece and three-piece surgically assisted rapid maxillary expansion with complete mobilization: a retrospective cohort study.

J Oral Maxillofac Surg. 2014 Nov;72(11):2278-88.
Habersack K1, Becker J1, Ristow O2, Paulus GW3

 

緒言

    上顎歯列弓幅径の外科的側方拡大法として、3-piece SARPEが挙げられる。
この方法が2-piece SARPEと比較して優れている点は、叢生により上顎4前歯の歯根が集中している症例において、歯根へのダメージを少なくすることができること、側切歯-犬歯間のスペースが少なくて良いこと、鼻中隔の変形が少ないこと、早くかつ3次元的な上顎のコントロールが可能であるということであると報告されている。
    そこで、本研究では、SARPEを2つの手術法で、歯と骨格的な拡大の違いについて評価した。

対象

    上顎の劣成長と両側交叉咬合を示す患者さんに対し、後ろ向きの研究を行い、以下の2群に振り分けた。
・Group.1 – 前歯部の叢生がない患者さんに対して、2-piece SARPEを行った。
・Group.2 – 前歯部の叢生がある患者さんに対して、3-piece SARPEを行った。

評価法

手術前(T1)、手術6週間後、手術6ヵ月後、手術12ヵ月後のP-Aと印象採得を行った。

結果

・両群において、犬歯間の拡大よりも後方部での拡大量の方が大きかった。
・T1-T2において、Group.1の犬歯間幅径が+6.8mm、Group.2+3.0mm拡大されていた。
そして、T2-T3で、Group.1の犬歯間幅径は-0.9mm、T3-T4で-0.6mm減少していた。
一方Group.2はT2-T3で犬歯間幅径が-0.5mm、T3-T4で-0.1mm減少していた。
    この、T1-T2による拡大量におけるT2-T4の後戻りの量は、Group.1で22.1%、Group.2で20%であった。
・T1-T2において、Group.1の第二大臼歯間幅径が+7.2mm、Group.2+6.8mm拡大されていた。
そして、T2-T3で、Group.1の第二大臼歯間幅径は-0.6mm、T3-T4で-0.9mm減少していた。
一方Group.2はT2-T3で第二大臼歯間幅径が-0.5mm、T3-T4で-0.4mm減少していた。
    この、T1-T2による拡大量におけるT2-T4の後戻りの量は、Group.1で20.8%、Group.2で13.2%であった。
・頬骨弓下部の上顎歯槽基底幅径でT3において、両群にわずかな変化が認められた。
Group.1で-0.1mm、Group.2で-0.3mmの減少が認められた。T4において、Group.1では変化が認められず、Group.2では-0.2mmであったが、有意差は認められなかった。

考察

・両群において、後方部での拡大量には有意差が認められなかった。
    一方、T2での犬歯間幅径の拡大量はGroup.1の方が有意に大きかった。
    T4において、両群ともに後戻りが生じていたが、これは骨格的なものではなく歯系によるものであった。
・上顎の水平的な劣成長による両側交叉咬合での側方拡大は、上顎後方部の可動性が重要である。
    縫合をしっかりと離開させないと激しい疼痛、臼歯部の過度な頬側傾斜や根吸収、裂開、骨折、神経の圧迫、非対称の拡大や拡大後の後戻りなどが生じてしまう。
    この点で、3-pieceは2-pieceと比較して側切歯-犬歯間のスペースがわずかで良く、中切歯歯根に対するリスクも少ない。
また、鼻の幅の拡大や鼻中隔の偏位のリスクも少ない。
さらに、3-pieceでの術後の側切歯にできるスペースは、2-pieceにおける正中にできるスペースよりも患者さんのストレスが少ない。
・翼突上顎縫合を離開しない、より保守的な外科的側方拡大方の術式も紹介されている。
これは、前方部の拡大に適している。
・両群において臼歯部の方が前歯部もしくは全体的な拡大量よりも多く拡大されており、3-pieceの方が2-pieceと比較してよりこの傾向が大きく認められた。
    この理由は、側方に分割された上顎の頬側への回転によって生じたものと考えられる。
・後戻りに関して、蝶形骨と周りの軟組織が大きな役割を担っていると考えられる。
   もしもこの部分(翼突上顎縫合)の離開が不十分であれば、非対称な拡大が惹起されてしまう。
    蝶形骨の境界部の離開を行ってSARPEを行った研究においては、その拡大の53%が骨格的、47%が歯系によるものであったと報告されている。
    本研究では、T2において、2-pieceで7.2mm、3-pieceで6.8mm拡大されており、頬骨弓下部の上顎歯槽基底幅径の拡大量を考えると、それぞれ骨格的に7.0mm、6.0mmの拡大が認められた。
    これは、骨格的な拡大量が2-pieceで97.2%、3-pieceで88.2%であり、歯系の拡大量はそれぞれ2.8%、11.8%でる。
    そのため、SARPEには、完全な縫合部の離開が重要であると考えられる。
・拡大1年後には、2-pieceは犬歯間幅径が22.1%、第二大臼歯間幅径が10.8%、3-pieceではそれぞれ20%、25.4%の後戻りが認められた。
    過去の研究では、犬歯間幅径で0-23%、大臼歯間幅径で0-33%の後戻りが認められたと報告されている。
    初診時の口腔内の状況や矯正治療、外科治療の手技の違いがあるため、一概に比較することは難しい。
    いくつかの研究では、オーバーコレクションをするため、より長く装置を活性化せていたり、臼歯部が下顎と咬合しないところまで拡大し、後の矯正治療にてCrown Palatal Trをかけたという報告もなされている。
    本研究では、外科手術を伴わない急速拡大装置を使用した側方拡大とは逆に、オーバーコレクションは行わなかった。
    オーバーコレクションについては、さらなる研究が必要であると考えられる。

 

まとめ

    2-piece SARPEも3-piece SARPEも、ともに、特に後方部における骨格的な側方拡大が可能であった。
    12ヵ月の経過観察でいくらかの後戻りが認められたが、主には歯系によるものであった。
    3-piece SARPEの利点をまとめると、以下の通りである。
・術後に正中にスペースが生じないため、患者さんにとって審美的に有利である。
・叢生のある前歯部に対する根へのダメージのリスクを減少できる。
・術前の側切歯-犬歯間のスペースが小さくてよく、そのスペースも早期に閉鎖できる。
・鼻中隔の偏位や花の幅の変形を惹起しにくい。

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