院長ブログBlog

矯正治療; 顎関節症について

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

 

MR grading of temporomandibular joint fluid: association with disk displacement categories, condyle marrow abnormalities and pain.

Int J Oral Maxillofac Surg. 2001 Apr;30(2):104-12.
Larheim TA, Westesson PL, Sano T.

 

目的

 

MRIを用いて顎関節の浸出液を評価し、関節円板の転位、骨髄の異常や痛みについての関連性について調査した。

 

対象

 

顎関節に痛みと機能障害を訴え、画像診断にてEffusion(浸出液過多)を認めた、連続した523人の患者さんで、顎関節に症状のない方の画像と比較した。

 

結果

 

・523人の患者さん中、70人(13%)にEffusionが認められた。
その中で、
– 片側性のものが61%で、両側性のものが9%であった。
– 両側関節円板の転位は80%であった。
– 76個のEffusionが認められた顎関節のうち、83%に閉口時の関節円板の転位が認められた。
– 31%に骨髄の異常が認められた。

 

考察

・顎関節に痛みを訴えない患者さんには、関節円板の転位、浸出液と皮質骨の異常が多く認められたが、骨髄の異常は認められなかった。
 これにより、Effusionと下顎頭の骨髄の異常は痛みの増幅因子である可能性が考えられる。
・無症状の方では、ほとんど重度のEffusionや完全な円板転位が認められなかった。
 そのうちのほとんどは部分的な円板転位であり、開口時にはこの円板転位が減少した。
また、今回の研究でEffusionが認められた患者さんのうち、2/3に復位を伴わない関節円板の転位が認められた。
・骨髄の異常が認められた患者さんのうち、91%以上(22/24個の顎関節)に開口時に減少しない円板転位が認められ、95%以上(23/24個の顎関節)に皮質骨の異常による変形性関節症や関節の炎症が認められた。
この割合は、全体的なサンプルに対しては、それぞれ67%と41%であった。
・骨髄の異常と変形性関節症との関係について、組織学的な研究では、まれに、正常な皮質骨にも骨髄の浮腫や骨壊死が認められることがあると報告されている。
別のMRIを用いた研究においても、下顎頭における骨髄の異常があっても変形性関節症ではないことも確認されており、骨髄の浮腫や骨壊死と変形性関節症は分けて考えるべきであると報告されている。

 

まとめ

 

顎関節にEffusionが認められる患者さんは、単に関節円板の転位が認められる患者さんと比較して、
痛みと機能的障害に加て、重度な関節内の病態が認められた。

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