院長ブログBlog

矯正治療; 顎離団術にて下顎を前方に移動させた症例報告

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

Stability after bilateral sagittal split osteotomy setback surgery with rigid internal fixation: a systematic review.

Joss CU, Vassalli IM.
J Oral Maxillofac Surg. 2008 Aug;66(8):1634-43. 


緒言

本文献は、下顎両側SSROによる下顎のAdvanceにおけるSystematic Reviewである。

結果および考察

・Skeletal Class IIにおいて、下顎両側SSROを用いた下顎のAdvanceは非常に有効な治療法だが、Skeletal Class IIIにおける下顎のSet backと比較すると長期安定性は低い。
 後戻りの要因は、関節窩に対する近位骨片の位置付け(関節窩に対して前方もしくは下方に位置付けたり、近位骨片に反時計回りの回転を加えると後戻りの原因になる)、骨片の固定法、Advance量、軟組織と筋肉の問題、下顎の回転方向と回転量、成長の有無、外科医の手腕や手術時の年齢など、多因子である。
 早期の後戻りは術式によるものであり、長期的な後戻りは咀嚼による機能のアンバランスによるものである。
・Low angle症例では垂直的な後戻りが大きく、High angle症例では水平的な後戻りが大きい。
 High angle症例において、手術による下顎の反時計回り回転は、咀嚼筋が元の位置に戻ろうとすることで後戻りを生じやすい。
 また、advance量が6mm以上になると、下顎頭部の軟組織の伸展による後戻りが生じやすい。
・下顎頭の進行性骨吸収に関しては、前方移動量が5~10mmのものは5mm以下のものと比較して5.2倍生じやすい。
 また、前方移動量が10mm以上のものは5mm以下のものと比較して20倍以上起こりやすい。
 そして、下顎頭の骨吸収による後戻りは、通常術後半年以内に生じることが多い。
・顎間固定時に近位骨片にねじれの力が加わると、下顎頭への血流が遮断され、下顎頭の骨吸収が惹起されやすくなる。
Late growthを調べた研究(17歳~80歳までの113人を対象)では、下顎の成長方向として、男性は前下方の成長であったが、女性は後下方であった。
 このため、男性は成長とともにClass IIが改善する方向だが、女性は成長とともにClass IIが悪くなる方向でと考えられる。

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