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アライナー型矯正装置について

カテゴリ:Information

アライナー型矯正装置の治療計画立案に関するWebセミナーを受講しました。

【概要】
演者:スター矯正歯科・歯科 福田 哲也先生
演題:「ClinCheck 6.0 3Dコントロールの活用法」

ClinCheck 6.0

3D治療計画
 
3次元的に確認が可能で3Dコントロール機能を備えたクリンチェック ソフトウエアにより、歯の移動および最終位置を正確に計画することが可能
・治療前および治療中、患者とのコミュニケーションを向上させるためのツールとして活用可能
・iTero スキャナーを用いることで、治療の進捗状態を当初の治療計画と照らし合わせて確認可能
・非抜歯プランや抜歯プランなど、複数の治療計画を即座に立案し、比較することが可能
 
 
クリンチェック
 治療のゴールに向かうためのナビゲーションソフトで、チェアサイドでは常にこれを表示しながら治療を行う。
 
ClinCheck Pro 6.0
 最新版のクラウドベースのクリンチェック ソフトウエアで、より効率的な治療計画の作成が可能。
 
クリンチェック治療計画作成のポイント
・3Dコントロールによる配列
 1歯もしくは複数歯において、垂直的・頬舌的・近遠心的な移動、回転(歯軸を中心に行うことと、近心もしくは遠心を中心に行うことが可能)、アンギュレーション、トルクを画面上で操作し、設定する。
・ステージング
 例えば歯列の遠心移動の際は、順次的移動(Sequential movement: 固定源となる歯が多いため、歯の移動がうまくいきやすいが、装置の数が多くなる)と同時移動(Simultaneous movement: 装置の数を少なくすることができるが、装置の不適合が生じやすい)がある。
 最終ゴールとしての歯並びが同じでも、細かく分けて移動を行う(順次的移動)か大きく複数歯の移動を行う(同時移動)でクリンチェック治療計画のステージ数は大きく異なる。
・アタッチメント設置、顎間ゴム
 効果的なアタッチメントを設置することで、理想的な歯の移動を行うことができる。
 Invisalignでの遠心移動において、縦長方形アタッチメントを用いれば、第一大臼歯で2.25mm、第二大臼歯で2.52mmの遠心移動が可能で、下顎下縁平面の開大は起こらないと報告されている。
(Maxillary molar distalization with aligners in adult patients: a multicenter retrospective study, Serena Ravera et al, Deregibus Progress in orthodontics. 2016; 17: 12.)
・コメント欄に記載すべきこと
 – 治療コンセプト(抜歯か非抜歯か、前歯部Flareの有無、拡大の有無、臼歯遠心移動の有無)
 – 遠心移動が必要な場合、順次か同時か
 – 犬歯と前歯の遠心移動法(分けて行うかまとめて行うか)
 – 移動スピード(デフォルトは1ステージ0.25mmだが、それだと歯肉退縮などのリスクがある場合は半分にすることも可能)
 – I.P.R.のタイミング(前歯部Flareさせてから行うのか、歯肉退縮防止のために最初に行うのか)
 – アタッチメント設置のタイミング
 – Over collectionの指示
 
アライナーが苦手な移動様式
・挺出
・回転
・前歯の歯体移動
・側切歯の移動
・大臼歯の近心移動
 → 難しい症例に対しては、部分的にブラケット装置やリンガルボタン(挺出用)を装着するなどの工夫を行う。
 
治療上の注意点
・治療中に、特に下顎前歯部の歯肉退縮や皮質骨唇側に歯根の膨隆が出てきた場合は、その歯を舌側に移動させるように治療計画を立案しなおす。
 
 実際の症例を供覧させていただきながら、ClinCheck Pro 6.0を用いた歯の移動法と特に注目すべきポイント(臼歯・犬歯関係、側方拡大時の左右対称性、最遠心面から見た大臼歯の中心溝・辺縁隆線の一致、非抜歯にて下顎前歯をFlareさせる場合は歯肉退縮を防ぐために歯根をやや舌側に入れる、Bolton分析(Tooth size)を確認する)をお示しいただきました。
 また、クリンチェック治療計画作成時は患者さんの希望をしっかりと確認したうえで作成すること、大臼歯の近遠心移動量は2.0mm以内が理想で、3.0mmを越えてくるようであれば、抜歯であれば非抜歯に、非抜歯であれば抜歯にという、別の治療計画を考える必要があるなど、とても勉強になりました。

患者さんの状態によっては、有効な治療法の選択肢の1つとしてご提案をしていきたいと思います。

 

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