日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。
Short-term effects of a modified Alt-RAMEC protocol for early treatment of Class III malocclusion: a controlled study.
Orthod Craniofac Res. 2014 Nov;17(4):259-69.
Masucci C1, Franchi L, Giuntini V, Defraia E.
緒言
上顎において、急速拡大法を改変した拡大・縮小法(Alt-RAMEC)により、従来の急速拡大よりもより上顎骨周囲の縫合をより離開することができると報告されている。
この治療法のタイミングは当初紹介されていた永久歯列期から乳歯列期へと変わってきている。
その理由は、拡大と縮小を繰り返す力が、歯周組織にとって良くないことと、上顎第一小臼歯・大臼歯の根吸収を惹起する可能性があるからである。
この合併症を、乳歯列期なら避けることができる可能性がある。
もう一つの理由は、乳歯列期では成長が同時に起こるため、思春期成長スパート前に上顎前方牽引を行うことでSkeletal Class III caseにおいて、骨格・歯系の改善により最適であると考えられるからである。
そこで、本研究では、成長期にあるClass IIIにAlt-RAMECとフェイスマスクを併用し、その効果を調査した。
対象
・Alt-RAMEC群: 31人(男の子: 17人、女の子: 14人、平均年齢: 6.4歳)
拡大は2回転/日(朝と夜に1回転ずつ、0.20mm/1回転)を1週間行ってもらい、同様の方法で1週間逆回転を行ってもらった。
これを2度繰り返してもらいった。
その後は従来の方法で、上顎臼歯口蓋側咬頭が下顎臼歯頬側咬頭の位置にくるまでオーバーコレクションの拡大を行ってもらい、フェイスマスクに移行した。
フェイスマスクは片側400-500g、咬合平面から30°下方の方向に引き、最初の6ヵ月は14時間/日の使用を指示した。
その後6ヵ月は夜間のみとし、6ヵ月経過後に装置を撤去した。
すべての患者さんは少なくともOver jetが(+)で、ほとんどの患者さんは臼歯関係II級になるまでオーバーコレクションを行った。
平均の治療期間は1.1年であった。
・RME群: 31人(男の子: 16人、女の子: 15人、平均年齢: 6.9歳)
拡大は1-2回転/日行ってもらい、治療のゴールはAlt-RAMEC群と同様に設定した。
その後フェイスマスクに移行してもらった。
フェイスマスクに関してもAlt-RAMEC群と同様のゴールを設定した。
平均の治療期間は1.1年であった。
・対象群: 21人(男の子: 9人、女の子: 12人、平均年齢: 6.5歳)
Class III患者さんで、治療を行わなかった群。
評価は、治療開始時(T1、平均年齢: 6.4歳)とフェイスマスク終了時(T2、平均年齢: 8.1歳)でのセファロにて行った。
結果
・SNAにおいて、Alt-RAMEC群(+3.1°)とRME群(+2.0°)は対象群と比較して有意に増加していた。
・SNBにおいて、Alt-RAMEC群(-1.9°)とRME群(-1.3°)は対象群と比較して有意に減少していた。
・ANBとWitsにおいて、Alt-RAMEC群(+4.9°、+4.2mm)とRME群(+3.2°、+2,6mm)は対象群と比較して有意に改善していた。
・Pp-Mpにおいて、Alt-RAMEC群(+1.6°)とRME群(+1.6°)は対象群と比較して有意に増加しており、垂直的高さの増加が認められた。
・顎角において、Alt-RAMEC群(-1.9°)とRME群(-2.0°)は対象群と比較して有意に減少していた。
・Alt-RAMEC群はRME群と比較して有意な上顎の前方位が認められた(SNA +1.2°)
・Alt-RAMEC群とRME群とで下顎に関しては有意差が認められなかった。
・Alt-RAMEC群はRME群と比較して上下顎の前後的位置関係が有意に改善していた(ANB +1.7°、Wits +1.6mm)
・Alt-RAMEC群とRME群とで垂直的には有意差が認められなかった。
考察
・Pp-Mpにおいて、Alt-RAMEC群(+1.6°)とRME群(+1.6°)は対象群と比較して有意に増加しており、垂直的高さの増加が認められた。
これは、FH平面に対する下顎下縁平面が増加したため(Alt-RAMEC群: 0.9°、RME群: 0.8°)と考えられる。
このことは、下顎の後方位にとって非常に重要なことである。
また、顎角において、Alt-RAMEC群(-1.9°)とRME群(-2.0°)が対象群と比較して有意に減少していたことも非常に大事な治療効果である。
・SNAにおいて、Alt-RAMEC群はRME群と比較して有意に増加していた。
これは、Alt-RAMECを行うことでより有効に上顎骨周囲の縫合を離開できたからであると考えられる。
顎関係の改善において基本的な考え方はAlt-RAMECもRMEも同じで、上顎の前方牽引によるものであり、患者さんの装置装着の協力度も非常に重要である。
まとめ
Class IIIの治療における短期的な効果として、Alt-RAMECはRMEと比較してより有効である可能性が示唆された。