日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。
A 4-year clinical evaluation of direct composite build-ups for space closure after orthodontic treatment.
Clin Oral Investig. 2015 Dec;19(9):2187-99. doi: 10.1007/s00784-015-1458-8. Epub 2015 Mar 24.
Demirci M, Tuncer S, Öztaş E, Tekçe N, Uysal Ö.
緒言
Bolton分析による上下顎の歯のサイズの不一致によるスペース クローズの方法として、
・矯正治療によるもの
・補綴治療によるもの
・ラミネートベニヤによるもの
などがある。
このうち、ラミネートベニヤを用いた修復法の利点は、その長期安定性が挙げられる。
過去の研究においては、5年後の安定性が94.4%、10年後が93.5%、20年後が82.93%であったと報告されている。また、別の研究では、7年後が92%、10年後が93%であったとするものもある。
しかし、今日の接着技術の進歩により、このスペース クローズの方法として、CRによるダイレクト ボンディング システムがひろく用いられている。
この技術の利点は、
・歯への侵襲を最小限にし、保存することが出来る
・可逆的な治療法である
・費用が抑えられる
・将来的にやり直したり追加することが可能である
などが挙げあれる。
そこで、本研究の目的は、矯正治療後に生じたスペースに対して、ナノコンポジットとナノハイブリッドコンポジットの2種類の材料を使用し、その安定性について調査した。
実験方法
対象は、矯正治療を終了した13-40歳までの30人(男性:8人、女性:22人、平均年齢:19.5歳)の以下のスペース クローズを行った。
・正中離開: 137例
・側切歯先欠により、犬歯を側切歯の形態にする: 1例
・側切歯の矮小歯の修正: 1例
これに使用した材料は、以下の2種類である。
・ナノ コンポジット(Filtek SupermeXT) + 3ステップ(Scotchbond) – 以下nano
特徴:幅広いシェードを実現可能であり、強度も備えているため、前歯部・臼歯部両方に使用することが出来る。
・ナノ ハイブリッド コンポジット(CeramX) + 2ステップ(XP Bond) – 以下nanohybrid
特徴:機械的強度がより優れている
修復方法の術式は、接着歯面を、ラバーカップを用いて水洗化で磨き、37%リン酸で30秒エッチングを行い、水洗・乾燥し、通法通り行った。
修復物は術後1、2、3、4年後に、色のマッチング、修復物の欠損、境界部の変色、むし歯の有無、境界部の適合性、表面性状の項目を、以下の方法で評価した。
・Alpha: 理想的な状態である
・Bravo: 臨床的に問題ないレベルである
・Charlie: 臨床的に問題があり、やり直した方が良い
・Delta: 修復物が欠けていたり動揺していて、すぐにやり直しが必要である
結果
・1年後の安定性
nano – 100%
nonohybrid – 100%
・2年後の安定性
nano – 97.1%
nonohybrid – 97.2%
・3年後の安定性
nano – 95.7%
nonohybrid – 95.8%
・4年後の安定性
nano – 92.8%
nonohybrid – 93.0%
・4年後以降の安定性
nano、nonohybridそれぞれともに、5症例以外は安定していた。
考察
本研究は接着面がエナメル質に限局していたため、両方の接着方に有意差が認められなかったと考えられる。
まとめ
本研究では、ナノ コンポジットもナノ ハイブリッド コンポジットも、ともに優れた修復方法であり、長期的な安定も達成できる可能性が示唆された。