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矯正治療; 骨形成不全症の症例報告

カテゴリ:Surgery

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

A combined orthodontic and surgical approach in osteogenesis imperfecta and severe Class III malocclusion: case report.

J Oral Maxillofac Surg. 2008 May;66(5):1045-53.

Aizenbud D1, Peled M, Figueroa AA.

 

本文献は、骨形成不全症(OI)の患者さんの矯正治療についてのCase reportである。

患者さんは17歳5か月の女性で、主訴は審美的要因による社会的、心理的障害で来院した。

既往歴

2歳の時に右側上腕骨骨折をし、この時にOIと診断された。
その後、5歳の時に左側橈骨、9歳の時に右側大腿骨を骨折し、その後も複数個所の骨折の既往がある。

家族歴

家族歴として、両親ともにClass IIIであり、母親はType I OIである。

顔面・口腔内所見

・下顎の過成長による下顎前突
・顔面非対称
・口唇の過緊張
・ガミースマイル
・中顔面の劣成長
・Over jet -14.0mm、Over bite -7.0mm
・上顎前歯の唇側傾斜
・下顎前歯の舌側傾斜
・上顎に3.0mm、下顎に8.0mmの叢生
・前歯部、臼歯部の交叉咬合

治療経過

・外科的矯正治療を行うことにした。
術前矯正治療は6ヵ月であった。外科処置は1-piece Le Fort Iにて上顎のAdvanceとImpaction、両側IVROにて下顎のSetbackと非対称の改善を行った。その後の顎間固定は8週間行った。麻酔による悪性高熱症や易出血性、下顎骨の骨折などのリスクがあるため、Maxillomandibular fixationを行った。そのご、術後矯正治療を3ヵ月間行った。その後、24ヵ月間の保定期間内で、咬合は安定している。

治療結果

・犬歯・臼歯関係はClass I
・適切なOver jet、Over biteの確立
・顔面正中の上下顎歯列正中の一致
・口唇の過緊張がなくなり、審美的にも改善された。
・下顎前歯部において、歯と歯槽基底の大きさの不調和から、多少のスペースが生じてしまった。

考察

・OIの特徴として、過度のSkeletal Class III、High angle、上顎の劣成長、下顎の反時計回りの回転が認められる。
このような重度の不調和がある場合、外科的矯正治療が第一選択になるが、OIの患者さんは血小板の働きの問題による易出血性が認められる。また、サクシルコリン、イソフルラン、ハロタン、エンフルランなどの薬剤による悪性高熱症の可能性や、後側彎曲や骨の脆弱化による挿管時の危険性もあるため、注意が必要である。
・OIの患者さんの易骨折性は、コラーゲン繊維の成熟障害により骨形成が不十分になり、皮質骨の厚みが薄くなることによる。
・本症例は、治療の難易度は高かったが、硬組織と軟組織において正確な治療結果を獲得することができた。過去の報告では、OIの患者さんの外科手術は、まず下顎を行い、その7か月後に上顎を行うのが良いとされている。しかし、我々は、麻酔や服薬のリスクから、上下顎同時に手術を行うことを推奨する。正確な予測と素晴らしい矯正治療、外科手術の準備により、最小限の治療期間で最大の効果を得ることこそが重要であると考えられる。

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