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矯正治療; むし歯の初期病変について

カテゴリ:T.B.I.

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

Predicting improvement of postorthodontic white spot lesions.

Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2016 May;149(5):625-33. 
Kim S, Katchooi M, Bayiri B, Sarikaya M, Korpak AM, Huang GJ.

 

緒言

 矯正治療中の患者さんにおいて、白斑は最大97%に認められると報告されている。
この白斑の白く見える原因はエナメル質表面のミネラルの欠如によるもので、これにより表面が粗造になり、結晶構造の抵抗性が減少し、光が散乱しやすい状態になるためである。
 これに対する対処法については数多く研究されており、ホームケアによるフッ化物の応用やコンポジットレジンによる修復処置などが紹介されている。
しかし、最も効果的な方法やタイミングについての強い根拠はいまだに認められない。

目的

 本研究の目的は、白斑の発生と患者さんや歯種における関係を明らかにすることである。

対象

 白斑の改善について、12-20歳の矯正治療後2ヵ月未満で、少なくとも1歯以上に白斑を認める患者さん101人に対し、以下の3群に振り分けて、調査開始時と8週後の上顎前歯部の写真を撮影して視診にて評価した。
・MI Paste Plus(GC America)を使用した群(MI)
・Prevident fluoride(22,600ppm)のフッ素のバーニッシュ塗布を行った群(PF)
・市販のフッ化物配合歯磨剤(1,100ppm)を使用した群(Cont)

結果および考察

結果と考察は以下の通りである。
・すべての群において白斑の改善が認められた。
・患者さんの年齢が上がるごとに白斑の改善が認められた。
 これは、経年的に器用さも上がることと、子供(6-12歳)と比較して大人(19-44歳)は唾液中のカルシウム濃度が上昇するためと考えられる。
・治療期間、装置除去後の期間と白斑の改善度は反比例していた。
 これは、最も改善がなされるのは装置除去直後であることを示しており、別の研究では、装置除去後1ヵ月以内にほとんど改善すると報告されている。また、白斑を長期間観察した研究では、最初の数ヵ月でほとんどエナメル質において表層化の再石灰化がなされ、その後はゆっくりと再石灰化が継続して行われると報告されている。
 また、治療期間の長さと白斑の改善率において、治療期間が長くなると白斑の改善が0.29%減少することが明らかになり、有意差も認められる結果であるが、この0.29%という数値は、実際の臨床では無視できるほどの数値である。
実際、短期間の治療(12-16ヵ月)と長期間の治療(36ヵ月以上)とでは、白斑の発生率に有意差がなかったとの報告もされている。
 また、白斑は装置装着6ヵ月後に多く認められ、12ヵ月後には徐々にその発生率が減少するとも報告されている。
・上顎側切歯は上顎中切歯よりも改善度が低かった。
 過去の報告においても、上顎中切歯と比較して上顎側切歯に白斑が生じやすいとされている。
この理由として、側切歯は歯の大きさが小さく、ブラケットから歯頚部までの距離も短いため、プラークが中切歯と比較してより停滞しやすいと考えられる。
・歯頚側1/3、真ん中1/3、切端側1/3で改善に有意差は認められなかった。
・白斑の拡散性において、白斑の改善の程度との関に有意差は認められなかった。
・リテーナーにおいて、55%はホーレータイプ、45%はESSIXタイプであったが、リテーナーの種類における有意差が認められなかった。
 白斑の予防においては、唾液の流動性が一番効果的であるといわれている。
ESSIXタイプでは歯全体を覆うため、再石灰化のプロセスが起こりにくいと考えられた。本実験においてリテーナーの使用時間については調査していないが、一般的にホーレータイプよりもESSIXタイプの方が協力度は高いと考えられるが、本研究では両装置に有意差は認められなかった。
そのため、リテーナーを選択する際は白斑の改善を第一に考える必要はないと考えられる。
・治療中の口腔内の衛生状態は白斑の改善と関係がなかった。
 ほとんどの患者さんの矯正治療中の口腔内の状況が悪い(47%)か非常に悪い(43%)であった。
10%の衛生状態が良かった患者さんにおいても白斑が有意に改善したということはなかった。
 これは、バイオフィルムの成分や食生活、唾液量やpH、緩衝能などの要件が口腔内の衛生状況よりも白斑の発生に影響を与えている可能性が考えられる。

まとめ

 患者さんの年齢、治療期間、装置を外してからの期間、歯の種類、白斑の表面性状、歯ブラシの回数が白斑の改善と有意に関係がることが示唆された。

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