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矯正治療

カテゴリ:Analysis

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

 

Effect of buccolingual root angulation on the mesiodistal angulation shown on panoramic radiographs.

Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2008 Jul;134(1):93-9.
Garcia-Figueroa MA1, Raboud DW, Lam EW, Heo G, Major PW.

 

緒言

 抜歯を伴う矯正治療において、抜歯部位の両隣在歯の歯根を平行にしないと、空隙閉鎖後の後戻りを生じる可能性がある。
 そこで、本研究では、オルソパントモグラフィーを用いて、歯根の頬舌的な傾斜についての評価を行った。

方法

 セファログラムの正常値に基づいた頭蓋骨のタイポドントを作成し、歯槽骨部に植立した人工歯において、3パターンの頬舌的な傾斜を付与した。
 対象歯は上顎右側中切歯・側切歯、上顎左側犬歯・第一小臼歯、下顎左側中切歯・側切歯、下顎右側犬歯・第一小臼歯とした。

結果

・平行性の歪みは、下顎よりも上顎で、そして犬歯・第一小臼歯でより認められた。
上顎におけるこの歪みにおいて、犬歯の歯根を頬側、第一小臼歯の歯根を舌側に位置させた時、一番歯根が近接しているように見え、その差は-14°だった。
一方、犬歯の歯根を舌側で、第一小臼歯の歯根を頬側に位置させた時、一番歯根が離開しているように見えた。
また、下顎においても、犬歯・第一小臼歯で、上顎ほどではなかったが、同じ傾向であった。
・犬歯・小臼歯の部分はオルソパントモグラフィーにて歯根が舌側にあると、より近心傾斜して見え、歯根が頬側にあるとより遠心傾斜して見える。
これは、犬歯・小臼歯部にだけ観察されたことで、上顎が下顎と比較してより有意であった。
・上顎中切歯・側切歯の歯根の頬舌側的位置付けによる最大の誤差は2.5°で有意であったが、2.5°は臨床的にはほとんど影響を与えない程度の数字である。

考察

・オルソパントモグラフィー撮影時のX線の直交の投影の偏差は15-45°と言われており、これは下顎と比較して上顎の方が大きく、この偏差は前歯部では少ない。
その結果、前歯部の歯根の頬舌的な傾斜は、近遠心的な距離の見え方には大きな変化を与えないと考えられる。
しかし、この偏差は後方に行くにつれて増加し、犬歯・小臼歯部で一番大きくなったと考えられる。
また、下顎よりも上顎でより歪みが大きいため、今回の研究では、上顎での根の頬舌的な傾斜がより大きく影響したと考えられる。
・矯正治療における抜歯で一番多いのは上下顎ともに小臼歯である。このレントゲン上での現象は小臼歯部でより重要なため、犬歯・小臼歯もしくは小臼歯・大臼歯での歯根の頬舌的な傾斜が近遠心的な距離に影響を与えてしまうと考えられる。
・顎のサイズや形も、歯根の傾斜に影響を与えると考えられる。
・もしも歯の隣接面にX線が照射されれば、傾斜における見え方の誤差は少なくなると考えらえられる。

まとめ

 歯根の頬舌的な傾斜は、オルソパントモグラフィーでの歯根の近遠心的な見え方に影響し、上顎犬歯・第一小臼歯部で一番顕著であった。
 そのため、抜歯部での歯根の平行性の評価には注意を要する可能性が示唆された。

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