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矯正治療; 上下顎前歯の圧下について

カテゴリ:Tooth Movement

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

 

True incisor intrusion attained during orthodontic treatment: a systematic review and meta-analysis.

Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2005 Aug;128(2):212-9.
Ng J, Major PW, Heo G, Flores-Mir C.

 

緒言

 垂直的過成長の傾向がある患者さんに対する矯正治療は、臼歯部の挺出によるバイトアップは推奨されず、前歯部の圧下が良いと考えらえる。
 本文献は、矯正治療における前歯部の圧下についてのSystematic reviewでる。

対象

 1966-2004年までのMedline、PubMed、Medline In-Process、EBM reviewについて、人による臨床研究で、前歯部の圧下についてセファロを用いて評価した研究を対象にした。

結果

 当初28の文献がヒットしたが、前歯の圧下に対する定量的評価と成長の考慮にかけていたため24個の文献が条件に合わず、却下された。
 そして、最終的に4個の文献が残った。

考察

・今回採択しなかったほとんどの研究において、前歯の圧下量は前歯の真ん中の移動を評価するものではなく、切縁もしくは根尖の移動距離を用いてを評価していた。
 これらは術後の歯軸の傾斜により左右される点であり、圧下に対して誤った評価になってしまう可能性がある。
 そして、最終的に残った4個の文献においては、前歯の真ん中を基準点にし、上顎もしくは下顎の平面からの距離を計測しており、信頼できるデータであると考えられる。
・下顎前歯部の方が上顎前歯部と比較してより圧下しやすいという結果だったが、その理由については明らかにされなかった。
 下顎前歯部の方が上顎前歯部と比較して骨密度が高く、これを考慮すると、上顎前歯部の方が圧下しやすいと考えられる。
 下顎の前歯部に関して、歯根部の歯槽骨の相互作用は、圧下力をコントロールすることで補償するべきであると考えられる。
・今回採択した4個の文献に関して、上顎は+0.26-+1.88mm、下顎は-0.19-+2.84mmの圧下が可能であると示されていた。
 しかし、使用する装置により数値にバラつきが認められた。
・今回採択した4個の文献のうち、2個の文献はセクショナル アーチを使用していた。
 そのため、この2この文献のデータを比較したところ、上顎前歯部の圧下の概量は1.46mm、95%信頼区間は1.05-1.86mmで、下顎前歯部の圧下の概量は1.90mm、95%信頼区間は1.22-2.57mmであった。

まとめ

 上下顎前歯部ともに純粋な圧下力を加えることができることが明らかになった。
 しかし、その量にはバラつきがあり、最良の治療法を挙げることはできなかった。
 そして、成長が終了している患者さんにおいては、セクショナル アーチにて、上顎前歯部ではおよそ1.5mm、下顎前歯部ではおよそ1.9mmの圧下が可能であることが示唆された。

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