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矯正治療; タンザニアにおける不正咬合の実態について

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日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

Prevalence of malocclusion and its relationship with socio-demographic factors, dental caries, and oral hygiene in 12- to 14-year-old Tanzanian schoolchildren.

Eur J Orthod. 2009 Oct;31(5):467-76.
Mtaya M1, Brudvik P, Astrøm AN.

 

緒言

 不正咬合は、むし歯や歯周病と並んで人類の中で最も多い歯の病気のひとつである。
 不正咬合は審美的な問題から精神的に影響を与えたり、咀嚼や嚥下、会話などの口腔の機能を損なわせたり、外傷や歯周病の原因になりえる。
 そこで、本研究では、タンザニアの矯正治療未経験の12-14歳の子ども1,901人(男の子:632人、女の子:969人)を対象に、裕福な地域(Kinondoni: 1,003人、男の子:41.1%、女の子:58.9%)と貧困の地域(Temeke: 598人、男の子:36.8%、女の子:63.2%)での虫歯治療経験歯数(DMFT)、口腔内の衛生状態(OHI-S)、不正咬合の状態を調べ、それぞれの相関関係について調査した。

方法

不正咬合の状態については、以下の項目についてスコア化し、調査した。
・臼歯関係
ClassI : 0 、ClassII・III : 1
・Over jet
1 : 1-4.9 mm, 2 : 5- 8.9 mm, 3 : ≥ 9 mm
1 : <0 to-1.9 mm, 2 : ≤-2.0mm
・Over bite
1 : 0.1-2.9 mm, 2 : 3-4.9 mm, 3 : ≥ 5 mm
・開咬
0 : なし、1 : 0-1.9 mm、2 : ≥2.0mm, 3 : lateral open bite
・交叉咬合
1 : なし、2 : 片側に存在する、3 : 両側に存在する
・鋏状咬合
1 : なし、2 : 片側に存在する、3 : 両側に存在する
・正中の偏位
1 : なし、2, : 少なくとも2mm以上のズレがある
・叢生
-2mm以上のA.L.D.が
1 : なし、2 : 上顎に存在する、3 : 下顎に存在する、4 : 上下顎に存在する
・空隙歯列弓
+2mm以上のA.L.D.が
1 : なし、2 : 上顎に存在する、3 : 下顎に存在する、4 : 上下顎に存在する

結果・考察

・全体を通して、36.2%に不正咬合が認められなかった。
・不正咬合を認めたのは63.8%で、そのうち裕福な地域は62.6%、貧困の地域は66.0%であった。
・臼歯関係について、ClassIは全体で93.6%、ClassIIは4.4%、ClassIIIは2.0%であった。
・Over jetについて、全体の73.3%が<5mmであった。
 また裕福な地域の子供の方が有意にこの割合が高かった。
 全体で5mm≧は11.1%、9mm≧は0.4%であった。
 また、全体で反対咬合は8.4%、切端咬合は6.8%であった。
・Over biteについて、0.1-2.9mm(Normal)は全体で65.9%で、3-4.9mmは17.9%、5mm≧は0.9%であった。 
 また、裕福な地域は貧困の地域と比較して3-4.9mmの割合が有意に高かった。
・Open biteについて、前歯部開咬は全体で15.0%であり、側方歯開咬は全体で1.1%であった。
 また、貧困の地域は裕福な地域と比較して前歯部開咬の割合が高かった。
 これにより、前歯部開咬は社会的な問題と吸指癖によるものであると考えられる。
 前歯部開咬は、白人よりも黒人に多く認められると報告されている。
これは、黒人が遺伝的な要因による下顔面高が長いことやHigh angleであることに加えて、環境的な要因として気候の特性により口呼吸が多いことや上顎前歯萌出後の吸指癖が挙げられる。
 本研究でも、吸指癖を行っている女の子は15.2%、男の子は7.4%で、女の子で有意に開咬の割合が高かった。
・正中のズレについて、全体で2mm≧が22.5%であり、本研究で1番多い不正咬合であった。
 貧困の地域(27.4%)は裕福な地域(19.6%)よりも有意にこの割合が高かった。
 この高頻度の正中のズレの原因は、片側の乳歯、特に乳犬歯の早期喪失によるものであると報告されている。
・臼歯部交叉咬合は全体で5.1%、鋏状咬合は14.3%であった。
 臼歯部交叉咬合も吸指癖により惹起されると考えられる。
・A.L.D.において、2mm≧の叢生が認められたのは全体で14.1%であった。
 また、2mm以上の空隙歯列弓は全体で21.9%であり、本研究で2番目に多い不正咬合であった。
 裕福な地域(24.この1%)が貧困の地域(18.2%)よりもこの割合が有意に高かった。
 黒人の場合、歯槽基底の大きさが大きいため、叢生よりも空隙歯列弓の割合が高くなるためと考えられる。
 そして、叢生、空隙歯列弓ともに下顎よりも上顎でより多く認められた。
・DMFTと相関関係が高かった不正咬合の種類は、正中のズレと開咬であった。
・むし歯治療の経験がある子(DMFT≧1)は、むし歯治療の経験がない子(DMFT=0)と比較して正中のズレが2.1倍、開咬は1.7倍、ClassIIは2.4倍、ClassIIIは1.7倍多く認められた。
 正中のズレの大きな要因の一つに片側乳歯の早期喪失が挙げられるが、乳犬歯や乳臼歯のむし歯による喪失がほとんどであり、この影響が前歯部に出れば正中のズレに、臼歯部に出ば臼歯関係に影響すると考えられる。
 また、開咬については、口呼吸による唾液量の減少がむし歯を惹起すると考えられる。
・OHI-Sのスコアが0の子どもは正中のズレが有意に少なかった。
 本研究の一番大事なことは、むし歯と家庭環境と不正咬合に正の相関関係が認められたということである。
 これは、口腔内の予防についてより強く取り組まなければならないことを示唆している。

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