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矯正治療

カテゴリ:CoR

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

Morphometric evaluation of changes in the alveolar bone and roots of the maxillary anterior teeth before and after en masse retraction using cone-beam computed tomography.

Angle Orthod. 2013 Mar;83(2):212-21.
Ahn HW1, Moon SC, Baek SH.

緒言

 歯の移動は、歯槽骨内の骨添加と骨吸収が1:1でなされ、リモデリングすることによって生じる。
この歯の移動様式を「with-the-bone」という。
 しかしながら、添加と吸収のバランスが崩れると、歯は歯槽窩から逸脱してしまう。
これを「through-the-bone」という。
 そこで、本研究では、最大の固定にて上顎前歯をEn massにてContractionした場合の歯槽骨と歯根の変化を、CBCTを用いて評価した。

対象および治療法

・37歳女性。
・上下顎前突により、上下左右第一小臼歯の抜歯を行った。
・上顎に加強固定としてフェイスボウとパラタルバーを用い、Contractionの力はパワーチェーンで200gにし、アンカレッジ ロスの割合は1:3.67±0.58mmとした。

評価法

 治療前と空隙閉鎖後にCBCTを撮影し、以下の項目について比較した。
・歯根の歯頚側、中央部、根尖側の歯槽骨
・垂直的な骨レベル
・根の長さ
・裂開の割合

結果

・歯槽骨について、唇側の中切歯の真ん中、側切歯の全体的に骨添加が認められ、上顎前歯部のすべての口蓋側において吸収が認められた。
 これより、歯は「through-the bone」の形式で移動したと考えられる。
 そして、この唇側での添加と口蓋側での吸収の割合は、中切歯で+4% vs -50%、側切歯で+24% vs -52%と吸収の割合のほうが高かった。
 これまでに、唇側の皮質骨下の骨添加は、唇側の皮質骨外側の骨吸収よりスピードが遅いと報告されている。
・歯槽骨に関して、中切歯、側切歯ともに歯頚部での吸収が有意であった。
 この理由として、上顎前歯部の移動はControlled tippingがなされ、口蓋側の歯槽頂により応力が集中したためと考えられる。
 しかしながら、中切歯、側切歯ともに唇側の歯頚部よりも中央部でより歯槽骨の添加が認められていた。これは、歯頚部に歯周組織の炎症が認められ、より多くの牽引力が加わったのにもかかわらず、垂直的骨吸収を認めたと考えられる。
・空隙閉鎖後のCBCTにて、中切歯と側切歯の口蓋側の裂開の割合が犬歯の口蓋側と比較して高かった。
 これは、中切歯、側切歯と犬歯との歯軸の違いによるものであると考えられる。
・今回の研究においてもう一つ大事なことは、骨レベルが下がったものが、空隙閉鎖後ならびに保定観察中に元に戻るかということである。
 本研究では、Debond後に骨レベルが戻っていなかった。
 過去の研究では、一度根により皮質骨の穿通が生じた場合、それが回復することはないと報告されている。
 これに関しては長期観察によるさらなる研究が必要である。

まとめ

 上下顎前突の患者さんに対する上顎前歯部En mass Contractionは、口蓋側の歯槽骨と、中切歯・側切歯の根吸収が認められる可能性が示唆された。

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