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矯正治療

カテゴリ:Surgery

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

Soft tissue changes associated with double jaw surgery.

Am J Orthod Dentofacial Orthop. 1992 Mar;101(3):266-75.
Jensen AC1, Sinclair PM, Wolford LM.

 

緒言

 外科的矯正治療の手術において、下顎を1mmセットバックすると、軟組織において下唇は0.6-0.75mm、オトガイで0.9-1.0mm移動すると報告されている。
 また、上顎と軟組織の移動量は0.33:1から0.76:1と非常に幅があり、これは術式の種類により左右される。 
 軟組織に対する処置を行わなければ0.4:1から0.82:1とも報告されているが、軟組織の縫合法としてV-Y closureとalar base cinch sutureを併用することで軟組織と硬組織の移動の割合は0.9:1になると報告されている。
 しかし、これらの報告は上顎もしくは下顎単独での手術を行った場合である。
 本研究では、上顎のImpactionと下顎のAdvanceを行い、軟組織の反応を確認した。

対象

 17名(男性:2名、女性15:名)で、上顎はLe Fort IでImpactionを行い、下顎は両側SSROにてAdvanceを行った。
 また、その他の手術(オトガイ形成術や鼻形成術)は行わなかった。
 上顎における軟組織の縫合法としてV-Y closureとalar base cinch sutureを行った。
 

方法

 術直前と術後平均17.9ヵ月後にL-Rを撮影し、その重ね合わせを行うことで硬組織ならびに軟組織の移動量を確認した。

結果

・上顎の前方移動に関して、上顎骨の前方移動量を100%とすると、鼻尖66%、鼻下点72%、上口唇溝100%、上唇最突出点78%、上唇下縁89%の前方移動が認められた。
・上顎の前方移動に関して、A点で1.8mm、上顎前歯切縁で1.9mmの移動を行った際、Nasolabial angleは1.2°の増加が認められた。
・上顎前歯の前方移動に関して、1.0mm移動させるとNasal dorsumは1.37°の上方回転が認められた。
・上顎のImpactionに関して、上顎骨の前方移動量を100%とすると、鼻尖21%、鼻下点18%、上口唇溝17%、上唇最突出点19%、上唇下縁38%の上方移動が認められた。
・上顎のImpactionを行うと下顎のAuto rotationが生じるため、上顎のImpaction量と下顎の前方移動量との間に正の相関関係が認められ、移動量は1:1であった。
・上顎前歯のImpactionに関して、1.0mm移動させるとNasal dorsumは0.81°の上方回転が認められた。
・上唇の厚みに関して、上顎を3.4mm Impactionし2.0mm前方移動させると、上口唇溝で0.6mm、上口唇で1.5mm厚みが薄くなっていた。
・咬合平面の変化により上顎前歯の傾斜角が変化するため、上顎の回転と上唇の変化との間に正の相関関係が認められた。
・人中とNasolabial angleに強い正の相関関係が認められ、人中が0.1°前上方回転するとNasolabial angleは5.6°減少した。
 反対に人中が0.1°後下方回転するとNasolabial angleは6.5°増加した。
・下顎の前方移動に関して、下顎骨の前方移動量を100%とすると、下唇上縁42%、下唇最突出点72%、下口唇溝98%、オトガイ100%の前方移動が認められた。
・下顎の上方移動に関して、下顎骨の上方移動量を100%とすると、下唇上縁110%、下唇最突出点150%、下口唇溝110%、オトガイ130%の前方移動が認められた。
・下唇の厚みに関して、口唇が薄い群では変化が認められなかったが、口唇が厚い群では下顎を1.0mm 前方移動させたとき、下口唇は0.13mm薄くなっていた。

まとめ

本研究では、上顎骨の垂直的過成長と下顎骨の劣成長の患者さんを対象にした。その結果、Nasolabial angle、下唇とオトガイの垂直的な反応以外は、上顎もしくは下顎単独の手術の際の反応と比較して大きな変化は認められなかった。
 また、もしも患者さんの上顎前歯が上唇から6.0mm露出しており、これを3.0mmにしたい場合は、軟組織が20%短くなることを考慮し、Impaction量を4.0mmにするべきである。
 しかし、上顎骨の前方移動を同時に行う際は、1.0mm移動させるごとに上唇は0.38mm短くなるため、上顎のさらなるImpactionが必要である。
 そして、Nasolabial angleと一番相関関係が強いのは上顎の前後的もしくは垂直的な移動ではなく、咬合平面の変化であった。

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