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矯正治療; 歯ブラシの違いについて

カテゴリ:T.B.I.

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

 

Effects of ultrasonic, electric, and manual toothbrushes on subgingival plaque composition in orthodontically banded molars.

Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2010 Feb;137(2):229-35. 
Costa MR1, da Silva VC, Miqui MN, Colombo AP, Cirelli JA.

 

緒言

 プラークコントロールを行う上で、しばしば矯正装置がその障害になりえる。
そこで、本研究では、プラークの除去に当たり、超音波ブラシ、電動歯ブラシ、手用歯ブラシを用いてそれぞれの効果を比較した。

対象

 マルチブラケット装置を装着している12-18歳の患者さん21人(男の子:11人、女の子:10人、平均年齢15.2歳)で、これをランダムに超音波ブラシ群、電動歯ブラシ群、手用歯ブラシ群の3群に振り分けた。
 そして、調査開始時と30日後において臼歯部のプラークの成分をDNA-DNA hybridizationにより評価した。

結果

・電動歯ブラシ群で、Tannerella forsythiaが有意に減少していた。
 この細菌は「Red complex」と言われ、歯周病と強い関連性がある。
 そして、縁下微生物であるこの歯周病の病原体が除去されたことは、プラークコントロールが改善したことを意味している。
・手用歯ブラシ群で、Selenomonas noxia、Streptococcus sanguinis、Prevotella melaninogenicaが有意に減少していた。
・超音波ブラシ群では、縁上プラークやブラケット周囲のプラークについて、有意に改善していた。
 超音波効果は、縁下において粘着性の微生物を除去し、微生物の成長を阻害する働きを持つ。
 過去の研究では、12人の矯正治療中患者さんに超音波ブラシを用いてもらったところ、4週間後にA actinomycetemcmitance、Porphyromonas gingivalis、P intermedia、Eikenella corrodents、F nucleatum、C rectusが有意に減少していたと報告されている。
 これはプラークコントロールにおいて超音波ブラシが手用歯ブラシよりも優れていることを示している。
 しかしながら、本研究ではどの歯ブラシを使用してもプラークや歯肉炎の指標について有意な差は認められなかった。
 この理由として、実験開始時の対象者の細菌数の割合が少なく、また、自分の歯ブラシを使用させたため、歯磨きの能力やモチベーションに対して一定レベルを保つことができたためであると考えられる。
・グループ間比較において、どの群でも微生物学的パラメーターに違いは認められなかった。
 歯周病の病原体としては、T forsythia、A actinomycetemcmitance、Porphyromonas gingivalis、F nucleatum、Treponema denticolaが挙げられる。

まとめ

 超音波ブラシ、電動歯ブラシ、手用歯ブラシのどの歯ブラシを利用してもプラークコントロールには有効であった。
 また、1日3回(2分/1回)の歯磨きにおいて、上記3つのどの歯ブラシが優れているということはない可能性が示唆された。

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