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矯正治療; 不正咬合とむし歯の関係性について

カテゴリ:Merit

日々の臨床に役立たせるための、矯正治療に関する論文を紹介します。

Prevalence of malocclusions in Hungarian adolescents.

Eur J Orthod. 2006 Oct;28(5):467-70. Epub 2006 Aug 21.
Gábris K, Márton S, Madléna M.

緒言

 スェーデンにおける1967年と1992年の不正咬合を調査した研究では、25年で、片側性交叉咬合はわずかな減少傾向(18→16%)を示したが、開咬は増加傾向(35→41%)であったと報告されている。
 そこで、本研究では、ハンガリーにおける不正咬合とむし歯の発生率の相関関係と口腔衛生状態について評価した。

対象

 16-18歳のハンガリー人483人(男の子: 194人、女の子: 289人)とした。
 評価項目は以下の通りである。
・不正咬合: Over jet、Over bite、Open bite、Crowding、Spaced arch
・Dental Aesthetic Index(DAI)
・Decayed, missing, and filled teeth(DMFT)
・Decayed, missing, and filled surfaces(DMFS)
・Visible Plaque Index(VPI): 頬側面のみ評価した

結果

・70.4%(340/483人)に不正咬合が認められた。
・11.2%(54/483人)に前歯、犬歯、小臼歯の1歯もしくは複数歯に欠損が認められた。
・前歯部での叢生と空隙歯列弓はそれぞれ14.3%、17%に認められ、同程度であった。
・空隙歯列弓は、下顎よりも上顎に多く認められた(2.9% vs 10.4%)。
・52.8%(225/483人)がClass Iであった。
・臼歯関係について、半咬頭のズレが26.9%(130/483人)、1咬頭のズレが20.3%(98/483人)に認められた。
・前歯の関係において、23.2%(112/483人)がClass I、25.9%(125/483人)がClass II div.1、13.2%(64人)がClass II div.2、8.1%(39/483人)がClass IIIであった。
・26.1%(126/483人)に過蓋咬合が認められ、開咬(10.8%)と交叉咬合(11.6%)は同程度に認められた。
・DMFTとDMFSについて、不正咬合を有しているものが有していないものよりも有意に高かった。
・DMFTの平均値と標準偏差において、不正咬合を有しているものは8.0(5.08)、有していないものは6.1(4.74)だった。
・不正咬合を有している340人(26.32%)におけるVPIは、不正咬合を有していないもの(18.19%)よりも有意に高かった。
・前歯部における叢生の影響を調べるためにVPIを測定したところ、叢生がないものは22.70%であったのに対し、1か所に叢生があるものは52.88%、2か所に叢生があるものは39.99%で有意差が認められた。

考察

・7-17歳817人を調査した過去の研究では、不正咬合の発生率と歯肉からの出血、歯石に相関関係が認められたと報告されている。
 この結果は本研究と同じで、本研究では特にVPIと叢生に有意な関係が認められた。
・不正咬合の発現について調査を行う場合、結果に影響を与える因子がある。
 具体的には、経年的に前歯部交叉咬合、臼歯部交叉咬合と臼歯部叢生についてである。
その理由は、これらの不正咬合は経年的に増加すると報告されているからである。
・矯正治療の必要性についての評価法は、通常Orthodontic Treatment NeedとDAIが用いらる。
これらを用いた研究において、Muselenaereは45%、Proffitはさまざまな人種での調査にて57-59%必要であると言及している。
 本研究において不正咬合の評価を軽度、中等度、重度に分けたところ、すぐに治療が必要なのは26%、治療が必要でないのは35%であった。
・DFMT、DMFS、VPIと叢生について高い相関関係が認められた。これは、プラークの蓄積しやすさが関係していると考えられる。

まとめ

 16-18歳のハンガリー人483人を調査したところ、高い割合(70.4%)で不正咬合が認められ、不正咬合とむし歯の発現、口腔衛生状態に有意な相関関係が認められた。

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